寒くなると姿を見かけなくなるカタツムリ。あのユニークな動きと殻のフォルムで人気の彼らは、冬になるとどこに行ってしまうのでしょうか?
小学生の時、夏休みの自由研究で飼い始めた「カタツムリ」が意外に長生きしてまして、調べるうちにカタツムリが冬眠する生き物であることを知りました。

この記事では、よく見ると意外とかわいいカタツムリの冬眠のしくみや、その場所、冬眠中の過ごし方などについて、やさしく分かりやすく解説します。お子さまの自由研究にもぴったりの内容なので、ぜひご覧ください。
この記事のポイント
- カタツムリ冬眠の仕組みと理由
- 冬眠場所の選び方と特徴
- 冬眠期間と地域別の違い
- 飼育カタツムリの冬眠ケア方法
- よくある質問と対処法
カタツムリ冬眠の基本知識
カタツムリは寒い冬の間、活動を休止して冬眠します。それはなぜなのか、どのように冬を乗り越えるのかを詳しく見ていきましょう。
カタツムリはいつから冬眠する?

冬眠開始の目安
カタツムリは変温動物であり、外気温に体温が影響されやすい生き物です。冬場の寒さに弱いため、活動するには不向きな季節になります。体を守るために、寒さが厳しくなると動きを止め、冬眠状態に入るのです。
食べ物が少なくなる冬にはエネルギーを節約する必要もあります。冬眠は生き残るための合理的な生存戦略と言えるでしょう。
また、殻に閉じこもることで体内の水分が失われるのを防ぎ、凍結からも身を守ります。
「寒くなったら眠る」。そんな自然のリズムに従う、カタツムリらしい生き方ですね。
「寒い時期は静かに眠るのが一番。無理に動いたら凍えちゃうからね。」(カタツムリの気持ち)
カタツムリの冬眠期間はどのくらい?
地域別冬眠期間
北海道・東北地方
11月~4月頃(約5-6ヶ月間)
関東・中部地方
12月~3月頃(約3-4ヶ月間)
関西・中国・四国地方
12月~2月頃(約2-3ヶ月間)
九州・沖縄地方
1月~2月頃(約1-2ヶ月間)
カタツムリ 冬眠 期間は、住んでいる地域の気候によって大きく異なります。寒冷地では長期間、温暖地では短期間の冬眠となるのが特徴です。
暖冬や急激な気温変化がある年は、冬眠期間が短くなったり、途中で目覚めてしまうことがあります。
冬眠する場所はどこ?カタツムリの隠れ家
カタツムリが冬の間どこにいるのか気になりますよね?カタツムリは安全で乾燥しにくい場所を選んで冬眠します。その場所には共通点があります。
土の中に潜って眠る
最も一般的な冬眠場所は、やわらかく湿った土の中です。落ち葉の下や木の根元など、自然に保湿されていて温度が安定している場所を好みます。
このような場所は外気温の影響を受けにくく、冬眠には最適な環境です。
石や木の下でじっと過ごす
石や木の陰もカタツムリにとっては理想的な避難所です。雨風をしのげるうえ、直射日光が当たらず、乾燥もしにくいという利点があります。
特に都市部では、ガーデンの石の下などで見つかることも多いです。
人の住む場所の近くでも
カタツムリは時に家の外壁のすき間や植木鉢の中など、人の暮らしのそばでも冬眠します。暖かさや湿度が保たれやすいため、意外と快適な環境なのです。
観察するには、冬の朝に植木鉢をそっと持ち上げてみると、ひっそりと眠っている姿が見つかるかもしれません。
「ふかふかの落ち葉の中って、まるでお布団みたいで気持ちいいんだよ」(カタツムリの気持ち)
冬眠の準備はどうやってするの?
カタツムリは、寒くなる前にきちんと冬眠の準備を始めます。
そのプロセスはとても賢く、自然の変化に敏感に反応するのです。
気温の変化を感じ取って準備開始
カタツムリは気温や湿度の変化に敏感です。秋が深まり、気温が下がってくると「そろそろ冬だ」と察知します。そして、冬眠に適した場所を探し始めます。
このようにして、自然のサインを頼りにタイミングを間違えずに冬眠の準備を始められるのです。
準備開始の条件
- 日中の最高気温が15℃以下になる
- 夜間の最低気温が10℃以下になる
- 空気の湿度が60%以下に下がる
- 日照時間が10時間以下になる
粘液で殻の入り口をふさぐ

冬眠前には、カタツムリは自分の殻の入り口に粘液の膜(エピフラム)を作ってふたをします。この粘液が乾燥を防ぎ、体の中の水分を守ってくれるのです。
この膜は時間とともに固まり、外敵の侵入や乾燥から身を守る重要なバリアになります。
粘液の膜(エピフラム)の役割
- 乾燥防止:体内の水分を守る
- 保温効果:体温の急激な低下を防ぐ
- バリア機能:外敵の侵入を防ぐ
- 密閉性:完全に外界から遮断
栄養を蓄えて冬に備える
カタツムリは冬眠中、基本的には何も食べずに過ごします。ですから、冬が来る前にはできるだけたくさん栄養をとり、体内にエネルギーを蓄えておく必要があります。
夏から秋にかけて、活発に食事をする様子が見られるのは、この準備の一環なのです。
冬眠前の食事パターン
8月~9月
通常の2倍程度の摂食量
10月~11月
徐々に食事量を減らす
「秋の風を感じると、そろそろおやすみの時間かなって思うんだ」(カタツムリの気持ち)
冬眠中の体の状態と過ごし方
カタツムリは冬眠中、まるで時計が止まったかのようにじっとしています。
体の中ではどのような変化が起きているのでしょうか?
体の動きがほとんど止まる
冬眠中のカタツムリは、ほぼ完全に活動を停止しています。心拍数や呼吸も非常にゆっくりになり、代謝が最小限に抑えられています。
これにより、少ないエネルギーで何か月も生き延びることが可能になります。
生体機能の変化
心拍数
通常時の1/10以下に低下
代謝率
通常時の5-10%程度
呼吸数
1分間に1-2回程度
体温
環境温度とほぼ同じ
水分とエネルギーの節約モード
殻を閉じている間、カタツムリは水分や栄養をほとんど消費せずに過ごします。体内の水分が失われないように、粘液の膜でしっかりと密封されているのです。
代謝を落として省エネモードになることで、凍死や乾燥死のリスクを回避しています。
省エネメカニズム
- 体内の水分蒸発を99%以上削減
- 消化活動を完全停止
- 筋肉の動きを最小限に抑制
- 神経活動を大幅に減少
外気温に合わせた微調整も
とはいえ、カタツムリの冬眠は完全に静止しているわけではありません。気温が上がった日には、少しだけ動いたり場所を変えたりすることもあります。
微調整のパターン
- 暖かい日:粘液膜を一部柔らかくして換気
- 極寒日:より深い場所へ移動
- 乾燥時:湿度の高い場所を探す
- 湿潤時:水はけの良い場所に移動
このように、微妙な変化に対応しながら生き延びていくのです。
「眠っている間も、ちょっとだけ外の様子は気になってるんだよ」(カタツムリの気持ち)
カタツムリが冬眠に失敗することもある?
自然の中で過ごすカタツムリにとって、冬眠は生き延びるための重要なプロセスです。
しかし、時にはその冬眠に失敗するケースも存在します。
急激な気温変化に対応できない
秋から冬にかけて、気温が徐々に下がることでカタツムリは自然と冬眠準備に入りますが、気温が急激に下がると、準備が間に合わない場合があります。
急な寒波が来たことで粘液膜を形成できず、そのまま凍ってしまうこともあります。こうしたケースでは、冬眠に入る前に命を落とすことになってしまいます。
危険な気温変化パターン
- 24時間で10℃以上の気温低下
- 霜が降りる前の準備不足
- 異常気象による予測不可能な寒波
冬眠場所が適していない場合
カタツムリが選んだ冬眠場所が、気温や湿度の変化に弱い場所だった場合も危険です。特に人間の生活圏では、外壁のヒビやコンクリートの隙間などに隠れることがありますが、日中と夜間の気温差が激しいため、体が対応できずに命を落とす可能性があるのです。
また、風通しが良すぎる場所や乾燥が進みやすい場所では体内の水分が蒸発してしまうリスクも高まります。
不適切な冬眠場所の例
危険な場所
- 直射日光が当たる場所
- 風通しが良すぎる場所
- コンクリートの表面
- 暖房器具の近く
理想的な場所
- 湿った土の中
- 落ち葉の下
- 石や木の陰
- 温度が安定している場所
天敵に見つかってしまうことも
冬眠中は殻に閉じこもって身を守っていますが、完全に安全というわけではありません。冬でも活動する昆虫や哺乳類の一部が、カタツムリを見つけて食べてしまうこともあります。
特に、乾燥して地面に落ち葉がなくなった場所では、目立ちやすくなってしまうのです。
冬期の主な天敵
- ネズミ類:冬でも活発に活動
- 鳥類:餌が少ない冬は特に注意深く探す
- 昆虫類:ゲジゲジなど一部の種類
- 人間:意図せず踏みつぶしてしまう
「安全な場所を選んだつもりだったのに…やっぱり自然って厳しいなぁ」(カタツムリの気持ち)
飼育カタツムリの冬眠管理方法
カタツムリを飼っている方にとって、冬眠期の管理はとても大切です。
自然界と違って、飼育下では適切な環境を人が整えてあげる必要があります。
冬眠させるかどうかを判断する

飼育下のカタツムリは、必ずしも冬眠させる必要はありません。温度と湿度が安定している環境ならば、冬でも活動を続けることができます。
しかし、自然に近い飼育スタイルの場合は、カタツムリが冬眠に入ることがあります。このときは、無理に起こさず静かに見守ることが大切です。
判断基準
冬眠させる場合
- 自然に近い環境での飼育
- カタツムリが自発的に活動低下
- 温度管理ができる環境
- 長期間の観察が可能
冬眠させない場合
- 室内の安定した環境
- 一年中観察したい
- 温度管理が困難
- 初心者の飼育
冬眠中の環境を整える
冬眠させる場合、10℃以下の環境が適しています。飼育ケースの中には湿らせた土や落ち葉などを入れておくと、カタツムリが潜りやすくなります。
また、殻の入り口を粘液でふさいで動かなくなったら、そっとしておくことが重要です。振動や光を当てすぎると、カタツムリが無理に起きようとして体力を消耗してしまうこともあります。
理想的な冬眠環境
温度:5-10℃を維持
急激な温度変化を避ける
湿度:70-80%を保持
霧吹きで定期的に調整
光:間接照明のみ
直射日光は避ける
静寂:振動や大きな音を避ける
静かな場所に設置
水分管理と安全確認を忘れずに
冬眠中も、ケース内の湿度は定期的に確認しましょう。乾燥しすぎるとカタツムリが脱水状態になり、死んでしまうおそれがあります。
また、時々ケースを静かに開けて、異変がないか目視で確認することも大切です。表面が白く乾いていたり、異臭がする場合は、状態をチェックしてください。
チェック項目と頻度
- 湿度確認:週1回
- 温度確認:毎日
- 生存確認:2週間に1回
- ケース清掃:月1回
「おうちでの冬眠も悪くないけど、やっぱり静かな環境がいちばん嬉しいよ」(カタツムリの気持ち)
カタツムリ季節別活動カレンダー
カタツムリの一年間の活動パターンを把握することで、冬眠のタイミングをより深く理解できます。
春(3-5月)
- 冬眠から徐々に覚醒
- 活動開始
- 繁殖期準備
- 食欲旺盛
夏(6-8月)
- 最も活発な時期
- 繁殖活動
- 産卵
- 高温時は夏眠
秋(9-11月)
- 冬眠準備開始
- 栄養蓄積期
- 冬眠場所探し
- 活動量減少
冬(12-2月)
- 冬眠期間
- 活動完全停止
- エピフラム形成
- 省エネモード
月別詳細スケジュール
冬眠準備期(10-11月)
- 10月上旬:食事量増加
- 10月下旬:場所探し開始
- 11月上旬:エピフラム準備
- 11月中旬:冬眠開始
冬眠期間(12-2月)
- 12月:完全冬眠状態
- 1月:最も深い冬眠
- 2月:暖かい日は微動
- 地域差あり
覚醒期(3-4月)
- 3月上旬:覚醒兆候
- 3月中旬:エピフラム溶解
- 3月下旬:活動再開
- 4月:完全復活
よくある質問|カタツムリ冬眠Q&A
カタツムリ冬眠についてよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Qカタツムリはいつから冬眠を始めますか?
- A
地域によって異なりますが、一般的には気温が10℃以下になる11月中旬から12月上旬にかけて冬眠を始めます。
- 北海道・東北:10月下旬〜11月上旬
- 関東・中部:11月中旬〜12月上旬
- 関西・中国・四国:12月上旬〜中旬
- 九州・沖縄:12月下旬〜1月上旬
- Q冬眠中のカタツムリを見つけたらどうすればいいですか?
- A
そっとしておくことが最も大切です。無理に起こすと体力を消耗し、最悪の場合死んでしまう可能性があります。
観察時の注意点:
- 強い光を当てない
- 触らない・動かさない
- 写真撮影は静かに
- 元の場所にそっと戻す
- Q冬眠から目覚めるのはいつ頃ですか?
- A
春の暖かさを感じる3月中旬から4月上旬にかけて徐々に目覚め始めます。
目覚めのサイン:
- エピフラム(粘液膜)が溶け始める
- 殻の中で微かな動きが見られる
- 湿度の高い日に活動開始
- 餌を求めて移動を始める
- Q飼育しているカタツムリも冬眠させるべきですか?
- A
必須ではありません。室内の安定した環境では一年中活動させることも可能です。
冬眠させる場合:
- 自然に近い生活リズム
- 繁殖に良い影響
- 長寿につながる
冬眠させない場合:
- 一年中観察可能
- 管理が簡単
- 初心者向け
- Q冬眠中に死んでしまった場合の見分け方は?
- A
以下の兆候が見られた場合は、残念ながら死んでしまった可能性があります。
危険な兆候:
- 殻が完全に白く乾燥している
- 異臭がする
- 殻に亀裂が入っている
- 春になっても全く動かない
- エピフラムが黒く変色している
※判断に迷う場合は、暖かい日に霧吹きで軽く湿らせて様子を見てく
- Qカタツムリの種類によって冬眠期間は違いますか?
- A
はい、種類によって冬眠期間や方法に違いがあります。
主な日本産カタツムリ
- ミスジマイマイ:3-4ヶ月
- オナジマイマイ:2-3ヶ月
- ウスカワマイマイ:4-5ヶ月
- コハクガイ:短期間または冬眠せず
外来種
- チャコウラナメクジ:冬眠しない
- ヨーロッパコハクガイ:短期間
- アフリカマイマイ:温暖地では活動継続
まとめ:自然のリズムに合わせて生きるカタツムリ

カタツムリの冬眠は、彼らが自然の中で生き延びるために編み出した知恵と工夫のかたまりです。
気温の変化を感じ取り、環境を選び、体を守るための粘液膜を作る――そのすべての行動が、冬の間を安全に乗り切るために必要なものです。
特に飼育している場合には、私たち人間がその自然のリズムを理解し、適切なケアを施すことが求められます。冬眠のタイミングや方法、必要な環境について知っておけば、カタツムリの命を守ることにもつながります。
この記事を通じて、身近にいる小さな生き物が持つ「生きる力」に、少しでも興味を持っていただけたなら嬉しいです。季節ごとの変化を敏感に察知し、静かに時を待つカタツムリの姿から、私たちも自然と向き合う姿勢を学ぶことができるかもしれません。
これからの季節、植木鉢の陰や庭の隅をそっとのぞいてみてください。きっとどこかで、小さな命が静かに眠っているはずです。



